バイクで怖いのは事故ですが、その次は出先で不動になることです。
不動になれば、レッカー代や交通費で結構なお金と時間が無駄になります。これは避けたいですよね。
バイクが突然不動になってしまう原因は、バッテリーかレギュレータ・レクチファイアの場合が多いです。
そこで不動にならないために電気系を監視したいところ。そのためには電圧計をつけるのがおすすめ。
特に古いバイクは、電圧計は必須です。
しかし、刻々と変わる電圧計の数値をどう見たらいいのだろう?と思っている人もいると思います。
そういう人向けに電圧計を5年間見続けた経験と、今回のリサーチから、電圧計の読み方をまとめてみます。
僕のバイクは2009年式のスズキDR-Z400SMで、基本的に11年前のオフ車ですので特別な電子制御はありません。吸気もキャブですので仕組みは単純です。
ですので、ここに書くことは基本的なことになります。
バイクの電圧計の見方
走行中に12.5Vの電圧は異常
今回、走行時に車載の電圧計の表示が、通常13.5Vくらいなのが突然12.5Vほどに急降下し、しかもそれをしばらくキープして復活しなかったので異常を感じました。
帰宅後にエンジンを切った状態で電圧計を見ると11.9Vと表示されていて、12Vを切っています。走行後の満充電時で12Vを切るというのは、だいぶ少ない感じ。
レギュレーターは3年前に交換しましたが、バッテリーは4年ほど使っていますので、今回はバッテリーを交換することにしました。
果たしてこの判断が正しかったのか。
そもそも何の数値が電圧計に表示されているのかについて、今回は書いてみようと思います。
ちなみに、いま使っている電圧計はKOSOの電圧計です。
本当はデイトナのこっちのやつが欲しかったのですが、品切れでした。
車載の電圧計で測っているものは、バッテリー電圧と充電電圧
後付けの電圧計はバッテリー端子に接続しますので、バッテリー電圧と充電電圧を測っていることになります。
発電機(オルタネーター)、バッテリー、電圧計の関係を図に書いてみました。
基本的に電圧計には、エンジン停止時はバッテリー電圧、エンジン始動後はバッテリー電圧か充電電圧を表示します。
エンジンがかかっている時は、どちらの数字を表示しているかは電圧計には表示されませんので、状況によって自分で判断することになります。
では、この2種類の電圧について説明します。
バッテリー電圧
エンジンを始動せずにバイクの電源をオンにすると、まず最初にバッテリー電圧が電圧計に表示されます。
バッテリー電圧とは、バッテリーに蓄えられている電気の電圧のことです。
その数字から、バッテリーの状態を推測することが出来ます。
例えばバッテリー満充電時で12.6Vなのが、久しぶりにバイクに乗るときに電源を入れたら電圧計に11.9Vと表示しているとします。
ということは、それだけバッテリーの電気が放電して少なくなっているということです。
もう少し長期で観察すると、バッテリーの劣化具合もわかります。
バッテリー満充電時で比較して、例えばバッテリーを新しくした直後の電圧計の数値が12.6Vだったのが、4年後に満充電でも12.0Vであれば、4年の間に0.6V劣化したということになります。
それだけ、バッテリーに電気を蓄えることが出来なくなったということです。
バッテリーに電気が蓄えられなくなってくると、数回のクランキングでバッテリーが上がったりします。もっと酷くなると全然充電出来なくなり、出先でスターターモーターを回すことが出来なくなります。
じゃ、どのくらいでバッテリーを交換した方がいいの?
そうですね。では、GSユアサのデータを見てみましょう。
バッテリー端子間の電圧(バッテリーの+端子とー端子の間をテスターで測る電圧)は、新品時で大体12.8Vです。
下のGSユアサのデータによると、12.5Vを切ると黄色信号、12.0Vを切ると要交換という感じでしょうか。
端子電圧 | 充電状態 |
13.0V | 100% |
12.4V | 60% |
11.8V | 20% |
10.5V | 0% |
今回交換した古いバッテリーは、先ほど書いたように電圧計で11.9Vでした。
実際はバイクの電源をオンにするとヘッドライト等、照明が点灯して電気を消費します。
そうすると車載の電圧計の数字は、バッテリー端子間を直接テスターで測るよりも低めに出ます。
DR-Zの場合で0.4Vくらい低く出ます。そうすると、バッテリー単体の電圧は11.9V + 0.4Vで12.3Vということになります。
満充電で12.3Vということは、バッテリー全容量の半分ほどしか充電出来なくなっているという推測が出来ます。
バッテリー新品時のエンジン停止状態での電圧計の数値、すなわちバッテリー電圧をメモしておくと、新品時からどのくらいバッテリーが劣化しているかがわかります。
注意しなければならないのは、満充電時で比較するということ。
例えば1ヶ月バイクに乗らないでいると、その間に放電して満充電時より少ない電圧を示します。
その場合は充電器で充電するか、またはしらばく走行して、満充電にしてから数値を見るようにしてください。
充電電圧
充電電圧とは、バッテリーを充電するための電気の電圧です。
バイクのエンジンが始動している状態だと、ジェネレーターとかオルタネーターと言われている発電機が電気を発電します。
その発電された電気が、バッテリーへと流れて充電されます。その電気の電圧が充電電圧です。
もう一度、発電機からバッテリーまでの電気の流れを図解します。
発電機とバッテリーの間に、レギュレータ・レクチファイアという部品があります。
出先で突然エンジンの調子が悪くなって始動出来なくなったり、スターターモーターが回せなくなる原因は、このレギュレータ・レクチファイアの故障がとても多いです。
出先で不動になった、と聞くと、
レギュレータかバッテリーじゃね?
と真っ先に考えます。
レギュレータは下の写真の小さい部品ですね(もちろん左側ですよ)。サイズがわかりやすいように、テレビのリモコンを横に置いてみました。車種によりますが、大体1万円くらいの部品です。
この小さな箱の役割を簡単に説明します。
発電機で発電した電気は、そのままでは電力が大き過ぎてうまく使えません。しかも発電した電力は交流なので、これも直流にしないとダメです。なぜならバイクのランプ類や電子機器は直流だから。
そこで、このレギュレータ・レクチファイアが活躍します。
レギュレータとは、発電機が発電した大き過ぎる電力を、バイクで使えるように小さく制限するもの。
レクチファイアとは、発電機で発電した交流電源を、バイクで使えるよう直流電源に変えるものです。
そもそもは別々だったのですが、技術が進んで今では写真のような小さい箱に収まっています。
レギュレータは電力を制限するための装置ですので、これが故障すれば、バイクが走行中の電圧計の数値も異常を示します。
例えば15Vを超えるような異常に高い充電電圧なら、レギュレータが異常。逆にピーク時でも12V以下のように異常に低ければ、発電機かレギュレータのどちらかが異常だと分かります。
レギュレータ・レクチファイアの壊れ方は2種類あります。
発電機からの電気を通さない方向で故障する場合
発電機からの電気がレギュレータの故障で遮られると、バイクが走行中の電圧計にはバッテリー電圧か、または普段よりかなり低い数字を示します。
その状態ではバッテリーに充電が出来ないので、バッテリーが切れれば走行不能になります。点火プラグに電気が行きませんからね。
バッテリーに電気が行かなくなると、バッテリーに電気がある間は走行出来ますが、バッテリーが切れれば不動になります。
満充電から走行不能になるまで、およそ20分くらいと言われています。
その間に、自宅やバイク屋に行ければレッカーしなくて済みますね。そのためにも常に電圧計を睨み付けている必要があります(笑)。
バッテリーが切れた時の症状は下記の通り。
- スターターモーターが回らないか、回り方が遅い。
- エンジン始動しても、プラグが被ったようにエンジンの回転が異常に重い。
- エンジンが始動してもすぐに停止。
発電機からの電力を制限せずに素通ししてしまう場合
逆にレギュレータが電力を制限せずに素通ししてしまうと、電圧計が異常に高い数値を示し、バッテリーやバイクの照明関係に負担がかかって、最悪破損します。
例えばヘッドライトが切れたりですね。
具体的にどのくらいの数値が異常?
電圧計に示す具体的な数値は、オルタネータやレギュレータの仕様によって変わります。
自分のバイクで普段どんな風に電圧計の数値が変化するのかを日々観察して、把握しておく必要があります。
ちなみにDR-Zの場合ですと、バイクの電源を入れた時に12.5Vを示し、走行中は13.5V前後です。速度や気温で0.3V前後は上下します。
これがバイクの走行中に12Vを示したり、または15Vや16Vを示せば、明らかに異常。近くならさっさと家に家に帰るか、バイク屋の近くで様子をみた方が良いです。
レギュレータ・レクチファイア故障に対する対策
バッテリーが突然死するというのはあまりないですが、レギュレータは突然死します。
ですので、バイクが古い、正確には古いレギュレータを使っているなら、対策を考えておいた方が良いでしょう。
僕なら、5年使ったレギュレータなら交換してしまいます。その方が安心してロングツーリングに出れます。出先で不動はイヤですからね。
まだ使えるのにもったいないというのであれば、新品や使える中古品を予備で持ってツーリングに出かけると良いですね。バイクのどこかに入れておくと邪魔になりません。
交換は簡単で、ボルトで簡単に本体を外せて、配線もカプラーを抜き差しするだけです。出先で慌てないように、事前に交換の練習をしておくと良いですね。
バッテリー電圧と充電電圧の関係
どれがバッテリー電圧で、どれが充電電圧なのか
僕は走行中のバッテリー電圧と充電電圧の関係がよくわからなくて悩みました。
というのは図にあるように、車載の電圧計はバッテリー端子に取り付けられているので、充電のための電気とバッテリーからの電気と、両方を同時に測れる状態なわけです。
両方を測れる状態なので、電圧計で表示している数字は充電電圧の場合とバッテリー電圧の場合と、状況によって絡み合っているのかな?と考えました。
いくつも解説を読んだのですが、この辺を説明している情報には出会えませんでした。結局見つけたのは、走行中の電圧計の表示は充電電圧であるという文言だけでした。
そこで実際の電圧計の数値から推測してみます。
2種類ある、走行中の電圧計の数字の変化
実は発電機の発電の仕方によって、電圧計の数値の変化の仕方が2種類に分けられます。
どうしてこういう違いが出るかというと、発電機の仕様が違うから。
大きく数値が変化するものは、エンジンのアイドリング時には発電機がほとんど電力を発電せず、エンジン回転が上昇するにしたがって発電量が増し、ある電力量に達するとレギュレータでカットします。
エンジンの回転数に応じて発電機の発電量が徐々に増し、3千回転や4千回転など、ある一定の回転数で、最大発電量に達する。
もう片方は、アイドリング時に既に十分な電力を発電機が発電するので、レギュレータの働きもあって、エンジンの回転数に応じて電力の上下はありません。
エンジンのアイドリング時に、すでに最大の発電量に達している。
自分のバイクがどちらのタイプなのかを把握しておきます。
エンジン回転数によって充電電圧が変化するタイプ:
このタイプの発電機の場合、エンジン回転数に応じて充電電圧が大きく変化します。
アイドリングでの発電量がかなり少ない場合、アイドリング時は電圧計にバッテリー電圧が表示されます。
エンジン回転が上がって充電電圧がバッテリー電圧を超えたところから、今度は充電電圧が表示されます。
アイドリング時の充電電圧が十分でない場合、アイドリングで長時間放置するとバッテリーが上がりますので気をつけてください。
アイドリング時に充電電圧が最大になるタイプ:
DR-Zの場合は、エンジン回転数によって充電電圧はほぼ変化がありません。これはアイドリング時に既に充電電圧が最大になるためです。
ですので、エンジンの回転数で変わるのは、プラグがスパークする消費電力だけです。エンジン回転が低ければプラグの消費電力は小さく、高ければ大きいということですね。
走行中は、充電電圧からバイクが消費している電気(ヘッドライト、プラグのスパーク等)を差し引いた分が表示されているので、プラグの消費電力分(0.3Vくらい)が上下する感じです。
バッテリーが満充電でなければ、電圧計の数値が低めに出る
例えば1ヶ月ぶりにエンジンを始動してバッテリーに充電が必要な場合は、バッテリーに吸い込まれていく電気の電圧が差し引かれ、走行中は少し低めに充電電圧が表示されます。
しばらく走ってバッテリーが満充電になると、通常の数字に戻ります。
例えば走り始めは12.5Vを表示していたのが、15分くらい走ると通常の13.7Vに戻ると言った感じです。
セルモーターを回している時の電圧計の変化
エンジン始動時は、セルモーターを回すので電気を大量に使います。
一瞬車載の電圧計の数字が11V台に入ってびっくりすることもあるかもしれませんが、それだけ電気を使うということです。
エンジン始動後、クランキングで消費した分を蓄電するためにしばらく電圧計の数字は低めに出ますが、数分走ると通常の数値に戻ります。
気温による電圧計の変化
気温によっても、電圧計の数字は少し変わります。
例えば冬場の寒い時は走行中に13.3Vくらいを示して、夏場の暑い時は13.8Vくらいを示す、といったような感じです。
これは気温によってバッテリーの状態が変わるからだと思います。気温が高い方がバッテリーが元気で、冬場の方がバッテリーに力がない感じがしますよね。
バッテリーの容量が、気温によって影響を受けているのだと思います。
新旧バッテリーの端子間の電圧を実測してみた
さて、ここからは少しテスターを使って実測してみます。
今回、丸一日走行後にエンジンを切った状態で車載の電圧計を見ると11.9Vと、12Vを切っていたのでバッテリー交換を決断しました。
それでは直接バッテリー端子間をテスターで測ると、どのくらいの電圧なのでしょうか?
購入したバッテリーが格安の台湾ユアサだったこともあり、確認のため新旧のバッテリーともに充電器で充電してから、実際にテスターで測って比較してみました。
新品バッテリーの場合、バッテリー電圧は12Vかと思いきや、実際は12.8V前後です。
メーカー曰く、正確なバッテリー電圧は充電後30分経ってから測るように、とのことだったので、充電した翌日にもテスターでバッテリー端子間を測りました。以下が結果です。
旧バッテリー | GSユアサ GT7B-4 | 充電直後12.8V | 翌日12.5V |
新バッテリー | 台湾ユアサ YT7B-BS | 充電直後13.2V | 翌日13.0V |
もう一度、GSユアサのサイトにあるデータです。
端子電圧 | 充電状態 |
13.0V | 100% |
12.4V | 60% |
11.8V | 20% |
10.5V | 0% |
そうすると、古い方のバッテリーは大体60%ほどしか充電出来ていないということになります。まだ使えないことはないですが、ちょっと心許ない感じはします。
実際に古いバッテリーは数回のクランキングでバッテリーが弱くなり、3週間バイクに乗らないと充電が必要でした。
それが新しいバッテリーに変えたら、何度でもクランキング出来る感じですし、1ヶ月バイクに乗らなくても元気にクランキングします。
新しいバッテリーと古いバッテリーは、このように違います。
ちなみにここで使ったテスターはSanwaのデジタルマルチメーターPM-3というもので、値段が安く、アマゾンの評価も良かったので買ってみました。
テスターを持ってなくて、特にこだわりが無ければ、小さくて軽いものを一つ工具箱に入れておいた方がいいと思います。
今回使用したバッテリーは台湾ユアサのもので、送料込みで3,500円くらいで買いました。GSユアサのものは14,000円ほどするので、雲泥の差です。
海外の格安バッテリーはたくさんありますが、その中でもこの台湾ユアサは日本のバッテリーと遜色なく、評判もいいです。
台湾ユアサは日本のGSユアサの関連企業ですので、中身はGSユアサと一緒だと思います。実際に僕も1年2ヶ月ほど使っていますが、全く問題ありません。
最後に
冒頭に「突然12.5Vに下降して」と書きましたが、結局原因はよくわかりません。
バッテリーが原因で、いきなり充電電圧が降下するというのも少し変な話です。
原因を推測してみると、電圧計そのものの異常か、後付けのUSB電源が何か悪さをしているのかもしれません。
バッテリーを交換後はこの症状は出ていませんのでますます不可解なのですが、とりあえず症状は出ていませんので放置しています。
今回記事にしたのは、基本的なバイクの仕組みです。
最近のバイクは電子制御がかなり進んでいるので、車種によっては特別な制御が入ることもあるかもしれません。その場合は、車種ごとに個別で調べてみてください。
Photo by Ben Hershey on Unsplash
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